垂直的独占協定に関するセーフハーバールール
「独占禁止法(2022年改正)」18条1項に基づき、事業者は原則として、取引先との間で、販売価格、販売可能な商品、販売地域および再販売先などについて協定(以下「垂直的独占協定」という)を締結してはならない。ただし、垂直的独占協定を締結した事業者が、①関連市場における市場シェアが中国国家市場監督管理総局(以下「SAMR」という)が定める基準を下回り、かつ②その他の要件を満たすことを立証できる場合には、禁止されない(同条3項、以下「セーフハーバールール」という)。
市場の予見可能性を高め、市場競争秩序を維持するため、SAMRは2025年12月9日に「独占協定禁止規定(2025年改正)」(SAMR令第111号、2026年2月1日より施行、以下「新規定」という)を改正・公布した。新規定は計53条から成り、関連市場における市場シェアの基準およびその他の要件を具体的に規定している。
本稿では、改正規定の特に重要と思われるポイントを簡単に紹介する。なお、特に表記しない場合、引用条文は改正規定の当該条文を指すものとする。
■セーフハーバールールの要件
「独占禁止法」に基づくセーフハーバールールの適用には、関連市場における市場シェア基準と「その他の要件」が満たされなければならない。「新規定」は、当該「その他の要件」が年間売上高であることを明確にした。また、垂直的独占協定における価格への不当な取引制限の有無に基づき、関連市場における市場シェア基準および年間売上高の要件も「新規定」によりそれぞれ細分化された(17条1項、2項)。
垂直的独占協定の種類 | 関連市場における市場シェア基準※1 | 年間売上高要件 |
垂直的価格制限行為※2 | <5% | <1億元 |
垂直的非価格制限行為※3 | <15% | N/A |
※1 「新規定」は、協定を締結する事業者と取引先の双方がそれぞれ関連市場における市場シェア基準と年間売上高要件を満たす必要があることを明確にした(17条1項、2項)。いずれか1方が満たさない場合、セーフハーバールールは適用できない。その理由は、垂直的独占協定が2つの関連市場の競争を同時に制限するためである。また、脱法防止規定として、協定に関与する商品に複数の取引先が存在する場合、「新規定」は、取引先の関連市場における市場シェアと年間売上高を計算する際、それらの市場シェアと年間売上高を合算して計算する必要があることも明確にした(同条3項)。 ※2 垂直的価格制限行為には、再販売価格維持協定と最低再販売維持協定が含まれる(「独占禁止法」18条1項)。 ※3 垂直的非価格制限行為は、司法実務では通常、販売可能な商品、販売地域、再販売先に関する協定を含む。ただし、現時点での公開事例では、垂直的非価格制限行為のみを理由として行政処罰を受けた事例はない。 | ||
■申請手続
「独占禁止法」は、事業者が上記の市場シェア基準とその他の要件に関して証明責任を負うとしている(同法18条3項)。しかしながら、「独占禁止法」は具体的な立証手続と証拠書類に関して定めていない。「新規定」は、事業者の立証手続きと証拠書類を以下のように細分化した(18条)。
項目 | 具体的な規定 |
申請時期 | 垂直的独占協定が調査手続きに入った後※ |
証拠書類 | 1. 事業者と取引先が協定を締結・実施した状況に関する情報 2. 事業者と取引先のそれぞれの経営状況 3. 事業者と取引先のそれぞれの市場シェアおよび関連商品の売上高等 |
1. 協定期間中の各年度において、対応する市場シェア基準と条件を満たしていること 2. 事業者が提供する情報は完全かつ真実であること | |
※ これに基づき、潜在的な調査に迅速に対応するため、垂直的独占協定に関与する企業は、日常の経営において適時に関連市場における市場シェア基準を満たしているかどうかを評価する必要がある。 | |
■審査手続
「独占禁止法」は審査手続に関して定めていない。新「弁法」は審査手続を明確にした。事業者の申請資料を確認後、協定が市場シェア基準と年間売上高要件を満たしていることを、SAMRが認めた場合、未立件の場合は立件しない。既に立件されている場合は調査を終了する。ただし、協定が競争排除・制限効果を持つ証拠を有する場合、セーフハーバールールは適用できない。この場合、SAMRは関連する垂直的独占協定を法に基づき調査・処理する(19条1項)。
■おわりに
垂直的价格限定行為に関与する企業は、市場シェアを評価し、関連製品の年間売上高を判断し、SAMRによって違法な垂直的价格限定行為と認定されることを防止する必要がある。近年、垂直的非价格限定行為のみを理由として行政処罰を受けた事例はないが、SAMRによる行政処罰を受けることを避けるため、垂直的非价格限定行為に関与する企業も市場シェアを評価する必要がある。






